2011/05/06

WTK2寄稿者紹介06(多田洋一)

多田洋一はこのGWに自然薯の素揚げを初めて食べ、「最高のポテトフライだ!」と驚きました。

Witchenkareの発行人である多田は同誌に関していろいろなことをやっていますが、でも「軸足は寄稿者のひとり」だと思っています。vol.2ではあらかじめ書き終えたものを発表するのではなく「締め切りから逆算してフィニッシュさせる」を試みました。

「まぶちさん」というタイトルはartisanに音が似ているようで気に入っています。近過去を1万字くらいで書いてみよう、とだけ決めてキーボードに向かいました。書き進めているうちにナラトロジーでいうところの錯時法というのか時系列シャッフルというのか...とにかく安倍晋三総理大臣(第90代)から鳩山由紀夫総理大臣(第93代)までの時代を書いたのですが、そのまま古い順に並べて構成することができなくなりました。

リアルライフでの私は主人公・福富さんの素行に対して「ちょっとどうなの!?」と思うところも多々ありですが、しかし書き手としての私は「ちょっとどうなの!?」な人物がデフォルトであることのおかげで“リアルライフでの縛り”みたいなものから開放され...でもなぁ、拙作を読んでくださった某美人からは「多田さんってそんな人だったんですか!?」みたいなメールをもらっちゃって...はい、すいません(福富さんのお話ですって!)。

近過去はまだまだ使用済み燃料棒みたいなもので...というような表現も、近未来からいずれ眺めてどうなんだろう。とにかく、いまは「まぶちさん」について、もう少し膨らませてみたい気持ちもあります。菅直人総理大臣(第94代)は今日、浜岡原発停止に関する記者会見を開きました。


 部屋に戻って厚紙の封を切ると透明なケースに入ったDVDが出てきた。テレビで再生すると派手なロングキャミとレギンスの市井がよくある健康器具に跨がって商品特性を説明していた。その動画がテレビを録ったものなのか、あるいは販促物やネット上のどこかにあるものなのかはわからない。そして僕は市井を知っているので好意的に鑑賞できたけれど、もう若くもない女がはしゃいでいるさまをまっさらな目で見た人がどう感じるのかも、ちょっとわからない。まあ、とにかく、市井は元気そうなのでよかった。
 ソファで五分ほどの映像を繰り返し何度か見た。シーリングライトを消し横になって地上波に切り替えてしばらく眺めていると徳井義実が北白川の話を始めてすごくおもしろいのにいつのまにか眠ってしまった。朝になってとくに代わり映えのしない一日をやり過ごして、そんな日々がふつふつと積み重なって北京オリンピックで上野由岐子が超人のような活躍をした夏も過ぎ去って、僕は「あなたと違うんです」と吐き捨てる総理大臣を到着が遅れたボーイング747のシートで眺めていた。またか、とは思った。リーマンショック当日のバラエティでタレントたちが「株価が気になって番組どころじゃない」と口走り、M -1グランプリでオードリーが2位になっても、僕の部屋のクローゼットにはまだビニールも破っていないマフラーが何枚か入っている。

〜「Witchenkare vol.2」P83〜84より引用〜

Vol.14 Coming! 20240401

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