2012/05/22

vol.3寄稿者紹介14(我妻俊樹さん)

3月末からTwitterをウィッチンケアの媒体名義アカウントで始めてみまして、それで、より多くのかたにお知らせしたいことならいろいろ思いつくのですが、しかし所謂「つぶやき」ってやつをなかなか思いつかず...はっきり言っておもしろくない使いかたしかできていません。...テレビの生バラエティ眺めてても、映画のプロモーションで出演した映画俳優なんかの「お知らせしたいこと」(何月何日からどこで上映etc.)はちっともおもしろくなくて、MCにいじられたときの表情や何気ないひとことがおもしろいもんなぁ。Twitterってくらいですから肉声、もとい肉言葉を公開しちゃうのがキモなのかも。

そんな私ですが、我妻俊樹さんのTwitterはいつもカッコいいな〜、と思って読んでいます。tumblrなら「リブログ」、Facebookなら「いいね!」、笑点なら「山田くん、座布団1枚!」、みたいな感じで我妻さんの「つぶやき」が「お気に入り」にどんどん増えていく。つい最近も「理解する」ということについて、こんな感じでピシッ。「喜劇 眼の前旅館」というブログを主宰している我妻さんは小説を書くだけでなく歌人でもありまして、Twitterの140字という縛りがよい方向に作用しているように思えます。

昨年の打ち合わせで、私は我妻さんに「名刺代わりのポップな1作をぜひ!」とお願いしてみました。vol.3掲載作品「たたずんだり」はそんな私のオファーに対する解答なのか、それとも!? ぜひみなさんが読んで、判断してください&語ってください。たとえ理解できたか理解不能だったかについてだとしてもいろんな肉声や肉言葉が飛び交ったほうが送り手としてはなにかとおもしろいですよね、我妻俊樹さん!






 そしてあなたはといえば、べたべたの小麦粉と卵を溶いた服だけで、飛び出していった先はからっと揚げてあなたの天ぷらにしてくれる油の池ではないんだ。すべてを流してしまうにきまっているどしゃぶりの雨だ。
 そのあらわになった乳房や尻に、なんの関心を示すこともない男のところへ、自然と足が向かう。
 道は一本で鏡の奥のように前後の区別がなく、遠くから見れば光の輪の中を歩いてるだけかもしれない。
 東京が点になるほど遥か遠くの町から見れば。
 家賃が払えなくなっちゃったの、とあなたは冴えない顔で恋人に明かすけれど、恋人は聞こえないふりをする。だって彼にはもうひとり恋人がいて、その人はとてもお金がかかるのだ。
 あなたは、あなたの取り柄であるお金のかからなさを、恋人に証明することを忘れるくらい、切羽詰まってたのでしょう。いつもの鼻の光が消えている。なのに視線が射抜いてるのは、地球からは見えない天頂にかさなる下から百番目の星。
 クビになったバイトのことを、まるで破り捨てられた洋服のように語るのだ。あなたは実際、灰皿の灰のように歴代の店長から捨てられてきた。なのに恋人はうしろからバスタオル一枚肩にかけてくれない。恋人は察しが悪く、慢心家で、右耳のほうがひとまわり小さくて、扉の裏に「漁師小屋の写真」が貼ってあり、意外なほど病弱だった。三回に一回は帰ってほしいという顔をしていた。その顔のうしろで、時計の針がかちっと重なる。それが私には未完成の高速鉄道の陸橋のように見える。
 ねえ何かつくってくれない? 恋人は退屈のあまり空腹をおぼえ、あなたにそう依頼する。あなたがうなずくと、料理をする人が裸ではまずいとでも思ったのか、彼は模様のついた大きな布をかかえてもどってきた。それが古いカーテンであることにあなたは気づかない。今では寝室が宇宙から丸見えになっていた。二人は無表情で、あなたの両手だけがまな板の上で踊っている。


Witchenkare vol.3「たたずんだり」(P108〜P113)より引用/写真:徳吉久
http://yoichijerry.tumblr.com/post/22651920579/witchenkare-vol-3-20120508

Vol.9 Coming! 20180401

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