2014/05/20

vol.5寄稿者&作品紹介20 谷亜ヒロコさん

知り合いになったころの谷亜ヒロコさんはV6の作詞などを手がけている、と伺いまして、たしか下北沢でバッタリ会ったりもしたから、きっとご近所だったのかな? 当時の私は6がどういう3と3なのかも把握していませんでしたが月日は流れて...いまはNHKの朝の顔(ウドーさんの扱いが上手)や軍師官兵衛ですね。あっ、官兵衛では櫛橋左京進の役者さんがかっこいいなぁと思って見ていて、のちにお父さんを知ってびっくり!

作詞家/ライターとしての谷亜さんと、今号に掲載した「今どきのオトコノコ」はどんな具合にご自身のなかで繋がっているのだろう、と考えてみました。じつは谷亜さんが寄稿してくださることになったとき、私は最初「大人の恋愛小説?」と勝手に想像したのですよ(谷亜さんに限らず、女性寄稿作はことごとく私の予想を心地好く裏切ってくださいまする)。...いやしかし作品を読んだあとは、じつは谷亜さんは「憑依の達人」なのではないか、でっ、その意識で「夏のかけら」の歌詞を読み直すと、なるほど、と。オトコノコだけじゃなく、谷亜さんはその気になればオジサンでもオジイサンでもオネーチャンでもアカンボーでもウチュージンでも、ポゼッション!?

作品内の「俺」は多分に頭でっかちで、現状にむかついているというより脳内の「あり得べき自分」と実際の自分とのギャップでやさぐれているんだと思いました。<なんだか探しているものが見つかった>...って。それでも、検索をきっかけに多摩川まで1人で出かけていってよかったです。実体験を通してものの見え方はずいぶん変わったようですが、しかし<どんな時も多摩川は右に向かってたぷたぷと流れているだけ>。。。

私にとっての多摩川の風景は、小田急線「和泉多摩川」駅から田園都市線「二子玉川」駅あたりまでの「左に向かって」流れている感じでして、作品に登場する南武線「平間」駅、さらに「俺」がスパムムスビを食べる川崎あたりは、ずいぶん違っていそう〜個人の漠然としたイメージでは「フナやクチボソが釣れそう」と「ハゼやエビが釣れそう」みたいなことかと思っていましたが、いまはそんな牧歌的なこと言えないほど厳しそうですね〜。

 長谷場の「送っていこうか」を途中で振り払い家に帰ってきて、すぐにPCの電源を入れ「貧乏、イヤ」と検索してみる。すると秒殺で、テンション高めのいきり立っている人々がどんどん出て来る。「私は友達より貧乏じゃない」「貧乏すぎておやつはいつも小麦粉をやいたヤツ」「生活がギリギリ過ぎてホームレス寸前」……。
 「ホームレス?」なんだか探しているものが見つかったような気がした。渋谷や新宿にゴロゴロいるあれか? 次にホームレスで検索をかけてみると、うちから近いところの多摩川沿いにいっぱいいることが分かった。しかもそいつらは何だかえらい豪邸に住んでいる。高床式のような手作り住居は、南の島にあるみたいな吞気さ加減だ。
 将来、俺もホームレスになる恐れがあるような気がしてくる。このまま大学を卒業しても、ブラック企業に勤めるのが関の山だ。毎日満員電車に乗って、朝から晩まで働いて、疲れてバックレて、行くところがなくなって、路上に寝泊まりする。そんな将来が安易に想像出来る。かといって、起業したりして闘うなんてことは出来ないんだ。闘いたくない。誰とも闘いたくない。自分とも闘いたくない。そんな俺はホームレスがピッタリなのかもしれない。
 十一月に入ってすぐの晴れた土曜日だった。
 思いきってJR南武線に乗り、俺は平間駅で降りて、iPhone 片手に多摩川側を目指した。さえない商店街と住宅街を抜けていくと、すぐに土手が見え河川敷が広がっている。
 川に沿って歩き始めると、少年野球をやっているのが見えた。一生懸命なかわいい子供の声は心地よく、そのサウンドに惹かれて川に近づいていくと、オヤジ二人がゴルフをやっていた。赤い文字で「ゴルフ禁止!」と書かれている看板の前で堂々のゴルフ練習。俺は散歩している風を装い、二人のオヤジ達にそれとなく近づいてみる。どちらの顔を見ても、将来こんな感じにはなりたくないぶくぶくと脂肪がたまっている顔だ。二人ともサラリーマンの休日。同じようなダボっとした洋服でお腹を隠して、顔がでかい。こういうふてぶてしさがないと、ここでゴルフなんて出来ないんだろう。そこへ見たこともないほど姿勢の良い男がやってきた。
「こっちの方が飛ぶって〜」
 ゴルフのクラブを持って突如現れたのは、のろのろとスイングしていたオヤジたちとはあきらかに違う。鍛えられた肉体に作業着風の紺色のジャケットにズボン。長髪に載せた野球帽の下に隠された顔は、どこか昔ながらの男らしさが漂う。初老にも見えなくもないが、俺の親父と同じ50歳ぐらいにも見える。さらによくよく見ると、顔の色の黒さが尋常じゃない。この人はここで生活しているんではないだろうか。俺は心細さと、その裏腹の興味が先走る。この男がホームレスかどうか、正体が知りたいのだ。


ウィッチンケア第5号「今どきのオトコノコ」(P0144〜P149)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/80146586204/witchenkare-5-2014-4-1

Vol.8 Coming! 20170401

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