2015/05/23

vol.6寄稿者&作品紹介33 須川善行さん

元『ユリイカ』編集長で『憂鬱と官能を教えた学校』(菊地成孔/大谷能生著)、『MUSICS』(大友良英著)等の編集者・須川善行さんは映画も制作(プロデュース)していて、その作品はミュージシャン・倉地久美夫のドキュメンタリー「庭にお願い」。私はいつだったかネットで偶然倉地久美夫の演奏を見て衝撃...それはいにしえのレコード屋でA〜Zチェック中に店内でかかった未知の音楽で電流が走り「これなんですか?」みたいな偶然ゆえの衝撃...を受け、同映画を観にいきました。ちょっと文字では表現しにくいのですが「こんな風にギターを鳴らせる人がいるのか」と...それをもう少し確かめたくて。

須川さんの今号への寄稿作は↑の私のようなエクスキューズ(音楽をテキストで語れない...)とは正反対の人、間章についてものです。ご自身が編集に携わった間章著作集全三巻の第一巻「時代の未明から来たるべきものへ」の最後に約20ページほどの「編集ノート」があってそれへのあとがき、というのがこの長〜いタイトルの正確な説明なのですが、では本作を読む前提は「間章著作集全三巻読破!」かというと...まったく正反対。むしろ「そもそも間章って、なんて読むの?」という人にも筆者が並走してくれる、逆引き水先案内のような作品を寄稿してくださいました。

高校生の私はくすねた小遣いで買ったショートホープを持ってジャズ喫茶に出入りしていました。町田にも雑居ビル3階に「カラビンカ(kalaviṅka)」という店(制服喫煙OK、でもお喋り厳禁)があってフリージャズ大音量! 私はそのあたりで逃げ始めたんですね、恐そうなジャズから。ジャズだけでなくロックでも「ここから先は立ち入らないようにしよう」と線引きして踵を返し始めた。日本の音楽だとわかりやすいかもしれないので名前を挙げると、灰野敬二、あぶらだこ、じゃがたら...ざっくり言うとかつて明大前にあった「モダーン・ミュージック」で売ってるレコードは全部恐かった(でも散財したw)。間章は長く私にとって、恐い音楽側から「こっちおいでよ〜」と手招きしている人のように思えていたのでした。違う言いかたをすれば、この人の評論に足を踏み入れると、それまで自分が組み立ててきた<居心地のいい場所>が根底から揺さぶられそう、という畏怖(畏敬)。

寄稿作内の最後の2行には、「やっぱり、ですか」と震撼。すでに人生も黄昏時なのでもうあんまり恐いものもなくなってきたし、私も少しずつでも足を踏み入れてみようかと思います(あっ、USTREAMにある須川さんの「時代の未明から来るべきものへ」解説もおもしろいです!)そして須川さんには、じつは小誌創刊時(よりさらに前のゲラ校正紙段階)に岸野雄一さんのご紹介でアドバイスをいただいたことがあり、その時の「きっと読みたい人いますよ」という言葉にはずいぶん勇気づけられました。あのときのご縁が今作に繋がったこと、たいへん嬉しく思っています!


 間の文章は晦渋だともいわれるが、読んでまったく意味のわからないものではない。先の引用箇所をいま読んでみても、その強烈な魅力はおそらく伝わるだろう。しかも、いわゆる空疎な美文とはまったく逆に、いうべきことはきちんといわれている。だが、これまではいつも文体の特異さばかりが取りざたされることで、伝えるべき内容(と、あえていおう)についての検討がなおざりにされてきたのだ。
 これは間の不幸とばかりも呼べないところがある。間はこうした書き方を意図的に選んでいるからだ。そこには、音楽的探求と文学的探求を同時に推し進めるという内的なモチーフと、あえて秘教的な書き方を選ぶことで読者のハードルを高くするという対外的なモチーフが同居していただろう。
 その是非はここでは問わないが、著作集刊行にあたり、先に述べたような淀みをなんとか抜け出して、間のテクストに新しい光を当てたいと考えていたことは間違いない。そのためには、間の文章を整理して並べるだけでは不十分で、二一世紀の読者のための新しい入り口を用意することこそが編者の仕事だという孤独な動機づけを自らに信じ込ませる必要があった。

ウィッチンケア第6号<死者と語らう悪徳について 間章『時代の未明から来たるべきものへ』「編集ノート」へのあとがき>(P200〜P205)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/115274087373/6-2015-4-1

【追記】
5/29 掲載後、「モダン・ミュージック」の正式名称は「モダ〜ン・ミュージック」とのご指摘をいただきました(感謝!)。また「カラビンカ」については須川さんより<間章がプロデュースしていたデレク・ベイリーの最初の日本ツアーの中で、カラビンカで録音したものが作品にもなっています>との情報が! なんと数奇な...。
http://bit.ly/1JWKMDF

Vol.9 Coming! 20180401

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