2016/05/05

vol.7寄稿者&作品紹介05 ナカムラクニオ&大六野礼子さん

ナカムラクニオさんのお店「6次元」で、小誌は過去に2度イベントを開かせていただきました。1度目は一昨年夏の<半開き編集会議>、そして昨年春には第6号発行に合わせた<試読会>を。世界から錚々たる人々が集うお店で、小誌の催しができたこと、ほんとうに嬉しい体験でした。そして、この2つのイベントがご縁となり、今号ではナカムラさんに寄稿を依頼したのです。

断片小説」はナカムラさんが以前から書き溜めている作品群で、私も以前、冊子のものをいただいたことがありました。小誌今号の掲載作は、その冊子に収録されていた作品のインターナショナルVer.的なもの。打ち合わせの際にいらっしゃった翻訳家・大六野礼子さんとともに会話がはずみ、今回のスタイルで掲載することに。ええもう、日本全国の方だけでなく、パリやリヨンやエクス=アン=プロヴァンスやマルセイユやニースの方にも、ぜひ届いてほしいと思います!


4作品のどれもが、短編映画のような趣を醸し出す物語。私は<皮膚を配る女>で描かれた風景が、強く印象に残りました。人混みの中での、ほんの一瞬のコミュニケーション...寓話的なできごとではありますが、短くもなく生きていると、些細な体験が後々まで記憶から消えず「そのことの意味」を確認したくなることってある、と。またこの作品内の女は「純憐な目で街ゆく人々を見つめていた」とあるので、「僕」は〝成功を確認してくれるはず...〟と選ばれて皮膚を渡されたんだろうなぁ、と。

ナカムラさん&大六野さんの作品が1冊の本にまとまるくらい増えて、世界中に拡がること祈念します。そしてナカムラさんは「文鯨」創刊号にも作品を寄稿していますので、ぜひみなさま、そちらもチェックしてください!



 僕は、少しだけ納得すると、その皮膚をポケットに入れた。
「皮膚って、大きな臓器なのよ。知ってた?」
 女はそういい残すと、笑った。

 一ヶ月後、その言葉が気になってもう一度、彼女に逢いにいった。
 しかし、いくら待っても、彼女は現れなかった。

 そうか、彼女は成功したのか。自分から脱皮することに。
 身体の内と外を区切る「壁」を越え、
 自己と他者の境界線を、消してしまったのだ。
 ちいさな抜け殻だけが、ポケットの中に残っていた。

Moitié convaincu, mi—douteux, je rangeai sa peau dans la poche.
C'était en souriant qu'elle me dit:
"La peau est considérée comme une grande organe. Le saviez—vous?"

Un mois passé, envahi par l'envie de revoir la mystérieuse, je repartis au lieu de notre première rencontre.
Mais je ne pus la retrouver.
...Donc, me dis—je, elle a réussit. Réussit à sortir de sa peau. En surparssant la frontière entre son monde interne et l'extérieur, entre le je et l'autruit, elle finit par s'harmoniser avec le monde.

Seule la mue de la femme restait dans ma poche.

ウィッチンケア第7号「断片小説 La littérature fragmentaire」(P028〜P035)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7
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【訂正とお詫び】P035の仏語表題《La Mer d'eau pétillante》は《L’Existance transparente》の誤りでした。訂正してお詫びいたします(発行人)。

Vol.8 Coming! 20170401

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