2012/05/18

vol.3寄稿者紹介10(多田洋一)

どうも自作について語るのは...なんてつまらんエクスキューズなしにざくざくいきます。今作もまたストックしていたものではなく、リアルタイムに締め切りを睨んで書き上げました。ただ、予定した期日には全然間に合わなかった。vol.1寄稿者は私以外5名、vol.2では13名、そして今号では21名。正直言って、締め切り前後は「自作を書くどころじゃない作業量」になってしまい...ADの有北眞也さんに「原稿落としたら、あなたはただのウィッチンケアの編集者」と言われ、それは嫌! 小誌での私の軸足は寄稿者だ、と。編集/発行作業のおまけでもの書いてるわけじゃないんです、私。

完成が難航した原因はもうひとつあって、それはおもな語り手(男みたいだが断定はしてない...人間じゃなくてもいいかも、壊れたAIBOとかw)が、途中で豹変したから。作者は当初、ちがう結末を頭に描いていたのです(そのための調べものも膨大にこなしてたり)。でも、それは嫌、と猛然と私に反旗を翻しやがって、それで、数日間書き進めることができなくなった。あんたほんとうにそれでいいの? と、語り手と話し合うこと数日...。結果、佐伯にはさらにむかつく思いをさせてしまいましたが...あっ、作者はものすごく佐伯にシンパシーを感じてこれを着想しましたので、ついしゃしゃり出たくなってね。佐伯LOVE。

「きれいごとで語るのは」ではある特定の1日を念頭に置きました。数日前、栗原裕一郎さんの紹介文内で「自分の意見を文章で表明してこなかった」と書きましたが、そんな私にも言いたいことが無ではなく、でっ、もし自分がなにかを語るなら、このようなスタイルをとってやっていきたい、と。でも今回読んでくださったかたの何人かにはこれが「ある特定の1日」について書いたものだということすら伝えられなかったことが最近わかり、ショッ〜ク(あなたにそんなこと言われるとは...w)! それでもへたれずに続ける。いま熱烈に読者募集中です、寄稿者・多田洋一は! みなさまどうぞよろしくお願い致します。


  電線に雀が鳴いていて、それはこの国ではありふれているし、だけど電線の雀に気が向くような生活はもうずいぶんしていないからおっとっとっと、とでも口ずさみたかったけれど、コートの裾を揺らし硬い靴音を刻む佐伯の背中に気圧されて無言のまま手のひらを旗にするにとどめる。キャンディーズでは、断然ラン派。低層住宅が残った歩道は私鉄駅へと連なり、高架橋の向こうに副都心のビルが散けて並ぶ。戸塚某はもはや顔すら思い浮かばないが三波伸介とジョン・レノンは命日が一緒。もう春なのにそんな気配はまだ感じられない。
 最初は殺しちゃおうかと、と佐伯。でも思い直して生け捕りにすることにしたんだそう。それって飼い殺しじゃないのと問い返すと、佐伯はしばらく考えて「生殺しだね」と訂正した。
 昨晩の長い話はあらかた佐伯自身の「殺すから生かす」へと至る心の物語。じつのところ、なぜA氏がそんなにまで佐伯に憎まれることになってしまったのか、正直いまもぴんとこない。でもA氏の佐伯への仕打ちを具体的に知らなくても、自分には佐伯の言い分を丸呑みすることができる。A氏は見知らぬやつ、佐伯は大事な人。見知らぬ輩を軸に事象を判断したりして、あなた、今までになにか「いいこと」のひとつでもありました?


Witchenkare vol.3「きれいごとで語るのは」(P074〜P079)より引用/写真:徳吉久
http://yoichijerry.tumblr.com/post/22651920579/witchenkare-vol-3-20120508

Vol.9 Coming! 20180401

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