2016/05/02

vol.7寄稿者&作品紹介02 長谷川町蔵さん

長谷川町蔵さんの「New You」は、2013年夏の一夜のできごとを描いた小説。タイトルは同年のフジロックに出演した、私も大好きなあのバンドの曲に由来しています。同作に登場する「僕」と有田はケンドリック・ラマーを流しながらドライブするような大学生ですが、その2人が行きがかり上NEWS(ジャニーズ)ファンの女子高生(JK)と出会ってしまい、さらにアニソン好きの佳奈(「僕」の妹/やはりJK)もからんできて...。物語内での音楽談義はほんとうにおもしろい&示唆に富んでいます。...しかしビョークを聞かされたJKコンビが「この人、生理が重いと思う」と第一印象を述べたりして、いやはや。

パーナさん事件」のことは、作品を読むまで知りませんでした。...というか、スマホ常備デフォルトの時代になり、たとえば電車で隣り合わせた人と自分との距離が、まったくわからない。もしかすると個別の小さな画面でセンテンススプリング砲の情報をリアルタイム共有しているのかもしれないんだけれども...そんな世の中で、不思議な邂逅を果たすことになった「僕」とパーナさん。長谷川さんの小説に登場する少女はいつも魔性の魅力を放っていますが、今作の音楽的なエンディング、私は号泣。

...第1回のフジロックのとき(1997年)、私はクルマで天神山スキー場近辺を走行しておりました(関係者ではなく偶然に)。ゴミのポリ袋を逆さにかぶって彷徨っていた若い男女を見つけて、幹線道路まで乗せたなぁ、レッチリの話をしながら。当時も状況がほぼリアルタイムで伝えられていたけれど、それはインターネット経由ではなく、パソコン通信でのやりとりだった記憶が...。

長谷川さんの小説作法は緻密で、たとえば今回登場した佳奈は、小誌第5号掲載作「プリンス・アンド・ノイズ」に名前が出てきた伊東佳奈(P69)だったり...。近著「ヤング・アダルトU.S.A. 」でアメリカ青春群像映画を徹底的に読み解いた作者の脳内には、小誌では断片しか窺い知れない「大きな物語」があるのだと思います。そう遠くないいつの日か、その全貌が1冊の本にまとまって刊行されること、ファンとして待ち望みます!




「それ、フジロックの会場じゃん。フジロックの方に行けばいいのに」と僕が言うと、パーナは言った。「洋楽には興味無いし、NEWSは守っていかなきゃダメなんですよ」
 彼女が説明するには、NEWSは結成当初から災難続きで、2年前には山Pと亮くんというグループの顔に脱退され、事務所からは解散勧告を受けてしまったらしい。だが残された4人はグループ存続を決定、ダンサブルな「チャンカパーナ」という大ヒットシングルを放ったそうだ。でも彼らはSMAPのような絶対的な存在では無いので、パーナさんたちが守っていかないといけないそうなのだ。僕は、イアン・カーティスを失った後に「ブルー・マンディ」をヒットさせたニュー・オーダーのことを思い出した。
 有田が茶々を入れる。「守っていかなきゃいけないのは洋楽の方だって。ライブは超満員でもアルバムは全然売れてないんだよ。『クロスビート』もサイズが小さくなっちゃったしさ」
 だがその願いは、後部座席のJKコンビに伝わらなかった。彼女たちは、町田インターから東名高速に入った頃には「リアル・フジロックフェスティバル」の偉大なる出演者たちの曲が流れるたび、辛辣なファースト・インプレッションを語り合うようになっていった。

ウィッチンケア第7号「New You」(P010〜P016)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7

長谷川町蔵さん小誌バックナンバー掲載作
ビッグマックの形をした、とびきり素敵なマクドナルド」(第4号)/「プリンス・アンド・ノイズ」(第5号)/「サードウェイブ」(第6号)
http://amzn.to/1BeVT7Y


Vol.8 Coming! 20170401

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