2016/05/07

vol.7寄稿者&作品紹介07 柳瀬博一さん

柳瀬さんの小誌第5号掲載作「16号線は日本人である。序論 」は、ほんとうに「読みました/面白かった!」と意外な機会に言われることの多い一篇でした。その反響については柳瀬さんご自身も今作内で触れていますが、私の実感でも「あ、そうですか(嬉しい!!)」という体験を多くして、あらためて「紙メディアの届き方」の摩訶不思議さを再確認しました。

今号掲載作は「16号線は日本人〜 」の続編的、そして前号掲載作とも緩やかだがしっかり繋がった内容。柳瀬さんは「NPO法人 小網代野外活動調整会議」理事として母校・慶應義塾大学の岸由二教授等とボランティア活動を続けていますが、今作で紹介されているふたつの漫画は、国道16号線界隈や三浦半島がメイン舞台。それも単に御当地モノということではなく、登場人物のメンタリティ...いや、その前提ともいえる風土の来歴が、作品の色を決定づけているように私(=人生半分はルート16近く暮らし)も感じました。

「SEX」「ヨコハマ買い出し紀行」とも、とびきり魅力的な女性が登場します。カホアルファさん。キャラクターも舞台設定も全然違いますが、でもこの2人が輝く瞬間が、両作品にはたくさん静止画で描かれていて、何度もページを捲る手が止まりました。個人的には、「SEX」は抗争が激化して絵の切れ味も鋭くなる後半より、学園の雰囲気が漂う前半が心安らかに読めたかな。逆に「ヨコハマ〜」は、巻を追うごとに時間の流れがせつなくなり、前半の緩い流れもここに収束していくのか、と胸が締め付けられました。

同時に、この2作品をピックアップし紐付けて語る筆者の美意識にも共感しました。もちろん国道16号線をベースにした論考なのですが、柳瀬さんはなによりこの漫画が好きで、両作者(芦奈野ひとし/上條淳士 )の世界観に共感しているのだろうな、と。ぜひ柳瀬さんの文章に触発されて、多くの方が漫画を手にとってくれれば、と願います! そしてそして、柳瀬さんと岸先生の共著<「奇跡の自然」の守りかた: 三浦半島・小網代の谷から >は明後日発売ですので、こちらもみなさま、ぜひ!



 国道16号線は、国道という名がつく前から、地形と人の行き来とが織りなす、歴史がつくった道だった。必然、時の為政者はこの道筋を押さえた。源頼朝から太田道灌から徳川まで。徳川の時代を終わらせた明治政府は16号線の西側を軍事基地の道とし、次の為政者となった米軍が基地の街とした。アメリカと日本が16号線の上で重なり合い、音楽が映画が娯楽施設が流通産業がこの沿線上で生まれた。もちろん漫画も。
『SEX』は、日本とアメリカとが重なる国道16号線とその延長線ともいえる沖縄とをつなぎ、ここにしかない「空気」を描く。「物語」にこだわってしまうとこぼれおちてしまう国道16号線の「空気」を。

『ヨコハマ買い出し紀行』。1994年から2006年まで、『アフタヌーン』誌上で12年間、連載された。主人公のアルファさんは20歳前後の女性。三浦半島先端の相模湾側、おそらくは前回私がとりあげた「小網代の森」からそう遠くない海に面した台地の縁で、「カフェ・アルファ」を切り盛りしている。彼女は実は人間ではない、アンドロイドなのだ。旅に出て戻らない「オーナー」の代わりに喫茶店の女主人として暮らしている。

ウィッチンケア第7号「国道16号線は漫画である。『SEX』と『ヨコハマ買い出し紀行』と米軍と縄文と」(P042〜P047)より引用
http://yoichijerry.tumblr.com/post/143628554368/witchenkare-vol7

柳瀬博一さん小誌バックナンバー掲載作
16号線は日本人である。序論 >(第5号)/<ぼくの「がっこう」小網代の谷>(第6号)
http://amzn.to/1BeVT7Y

Vol.8 Coming! 20170401

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